専門家に聞いてみた!
肩こり痛対策コラム

肩こりには筋トレが効くってホント?
プロに教わる肩こり解消“筋トレ術”
私たち現代人を悩ませる肩こり。「肩回りの重苦しくてこわばった感じを何とかしたい!」――そう願ってやまない人は多いことでしょう。つらい肩こりを解消するためには、マッサージやストレッチなどが効果的だといわれています。
なかでも、肩こりの根本的な改善につながるといわれているのが、“筋トレ”です。どのような効果が期待でき、またどのようなトレーニングが望ましいのでしょうか。体型管理カウンセリングやパーソナルトレーニング指導を行っている、ボディデザイナーの森俊憲さんに話を聞きました。
筋トレが肩こり撃退に欠かせないワケとは?
そもそも、肩こりが生じてしまう原因は何が考えられるのでしょうか?
「肩こりの原因はいくつかありますが、代表的なものでいえば頭や腕を支えている筋肉“僧帽筋(そうぼうきん)”が衰えてしまい、血液循環が悪くなることです。この僧帽筋にしっかりとした筋力がついていないと、頭や腕の重みによって姿勢が前かがみになりがちになります。姿勢が悪くなると、同時に肩回りの血流が滞り、老廃物も蓄積されて肩こりがますますひどくなってしまいます」(森さん、以下同)
ということは、僧帽筋を鍛えることが、肩こりの解消につながるってことですね!
「その通りです。実は、『ボディビルダーは肩こりにならない』といわれていて、それは僧帽筋が鍛えられているからなんです。つまり、体のベースになる筋肉というパーツを強くしていくことで、肩こりの解消が期待できます。もちろん、マッサージや揉みほぐしにも一時的な効果はありますが、いま感じている不快感や痛みにどう対処するかではなく、根っこにある原因にアプローチする必要があると思います」
ちなみに、僧帽筋は普段の生活ではあまり使わないため、筋トレを通して意識的に使うことが大切になるのだとか。ただ、“筋トレ”と聞いただけで、ハードルの高さを感じてしまう……。
そこで、家の中でも簡単に行うことができ、肩こりにもバツグンの効果を発揮する筋トレ5つを森さんに伝授してもらいました。
※椅子を使用した筋トレをする際は、キャスターなしの椅子が望ましいです。キャスター付きの場合は、キャスターが動かないようにしっかりと固定してください。
日常生活に組み込める簡単おすすめ筋トレ5選
座ったままで手軽にできる「リアレイズ」
「僧帽筋をはじめ、肩にある筋肉の一つである『三角筋』の後部や、肩甲骨回りにも効くトレーニングです。椅子さえあれば、道具を使わずに行うことができます」
1)椅子に浅めに腰かけて、頭から腰まで一直線を意識した状態で上半身を少し前かがみに倒す。肘を少し曲げて両手を肩幅に広げる。


2)上体と腕の形は変えずに、床に平行になる位置まで大きく広げ、1の位置まで下ろす動作を繰り返す。


- ポイント
-
- ・勢いをつけて腕を振り上げたり、反動を使ったりしないように。
- ・腕はゆっくりと動かしましょう。
- 回数
- 腕の上げ下げを連続してそれぞれ10回行います。1日2セットが目安です。
テレビを観ながらできちゃう「アームリフト」
「僧帽筋につながる胸の筋肉を効果的に刺激します。重力に逆らうための筋肉を強化することで、バストアップにも効果的です。短時間で済みますので、ちょっとしたスキマ時間にできますよ」
1)椅子に浅く腰かけて、背すじをピンと伸ばした状態で手の平と両肘を合わせる。
2)手の平と両肘に力を入れて押し合ったまま、両肘を床に対して垂直にゆっくりと上に引き上げ、「手順1」の位置まで下ろす動作を繰り返す。
- ポイント
-
- ・動作中は、背すじを伸ばした状態を常にキープ。
- ・じっくりと時間をかけて上げ下げします。
- ・腕を上げるときは、なるべく肘が離れないように意識。
- ・手を上に挙げるほど、胸と腕の引き締めに効果的です。
- 回数
- 腕の上げ下げを連続してそれぞれ5回行います。1日2セットが目安です。
椅子を活用した「アームバックエクステンション」
「椅子の座面などを活用して、二の腕の裏側にあたる『上腕三頭筋』をしっかりと効果的に刺激します。引き締まった二の腕をつくることで、肩への負担を減らすことができます」
1)椅子の腰掛け部分の端に手の平を置いて腕を伸ばす。上半身が傾かない程度に膝を軽く曲げる。
2)肘を曲げてお尻をゆっくりと落とす。肘が90度近くまで曲がったら、今度は伸ばして「手順1」の状態に戻す。
- ポイント
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- ・かかとの位置をお尻に近づけると、腕への負荷が弱まり楽にできます。
- ・かかとをお尻から離すと、負荷が強まります。
- ・脚の力は使わずに、腕力だけで座面を押して上半身を持ち上げることを意識します。
- 回数
- 肘の曲げ伸ばしを連続してそれぞれ5回行います。1日2セットが目安です。
移動時間にもできる「シュラッグ」
「非常にシンプルな動作ですが、僧帽筋にダイレクトに効く筋トレで、首から肩にかけてのラインをしっかり鍛えることができます。激しい動きではないため、カバンさえあればどこでもできます。電車の待ち時間に試してみては?」
1)背すじと肘を真っ直ぐ伸ばして、カバンの取っ手を両手でしっかり持つ。
2)手を下げた状態から肘を曲げずに、肩をすくめるようにしてカバンを持ち上げ、「手順1」の状態に戻します。
- ポイント
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- ・腕の力ではなく肩回りの筋肉を意識します。
- ・カバンは身体に沿うように引っ張り上げます。
- 回数
- 肩の動きを連続して10回行います。1日2セットから3セットが目安です。
体幹を強化して肩の負担を減らす「ヒップフロート」
「体幹の筋肉に刺激を与えることができる筋トレです。僧帽筋に直接アプローチするものではありませんが、体幹を鍛えることで身体に軸ができるので、肩こりの原因にもなる“姿勢の悪さ”を改善することにつながります」
1)上半身をやや前に傾けて椅子に深めに座り、腰掛け部分の端を両手でしっかりと握る。
2)腕と腹筋に力を入れて座面からお尻と太ももを浮かし、3秒間キープしてから下ろす


- ポイント
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- ・無理にお尻を高く浮かせる必要はありません。
- ・身体の重心を意識してバランスを取るようにしましょう。
- 回数
- お尻と太ももを浮かして下ろす動作を5回連続して行います。1日2セット目安です。
筋トレがメンタルヘルスにも好影響を及ぼす
今回ご紹介した5種類の筋トレを毎日継続すれば、3カ月ほどで肩こり解消の効果が現れてくるとのこと。さらに、筋肉量を増やすことは、全身のフットワークが軽くなるだけでなく、精神面にもプラスの効果をもたらしてくれるようです。
「肩こりは体の不調を示すバイタルサイン。体の疲れだけではなく、ストレスなど精神的な疲れも肩こりとして現れていることも考えられます。よく仕事が忙しくて運動をするテンションにならないという人もいますが、生活のワンシーンにちょっとした筋トレを行うことで全身の血の巡りも良くなりますし、ひいてはメンタルヘルスの向上も期待できます」
ちなみに、途中で挫折せずに長続きさせるポイントは、ちょっとした合間に行う“スキマ時間筋トレ”と、何かをしている最中に実施する“ながら筋トレ”の両方を生活に組み込むこと。すぐに劇的な変化は望めないかもしれませんが、継続は力なり。頑固な肩こりからの解放を目指して、お手軽筋トレを日常生活に加えてみてはいかがでしょう。
(末吉陽子+ノオト)
取材協力

森俊憲さん
株式会社ボディクエスト代表、ボディデザイナー。自らの実体験に基づきメソッド開発したオンライン方式のパーソナルトレーニングプログラムにて、これまでに9,000名以上への個別カウンセリングやパーソナルトレーニング指導を行う。